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診察室で血圧が高くなる?
白衣高血圧について解説

白衣高血圧という言葉を知っていますか?
普段の血圧は低いのにもかかわらず、病院の診察室で測ると血圧が上がるという方がいらっしゃいます。白衣高血圧は、常に血圧値が高い持続性高血圧とは区別されます。
本記事では、そんな白衣高血圧の概要やリスク、対策について詳しく解説します。

目次
この記事の監修医師
帝京大学医学部 衛生学公衆衛生学講座 教授
浅山 敬 先生

白衣高血圧とは?

白衣高血圧とは、病院の診察室で測定する血圧が高血圧であっても、それ以外の場面であれば非高血圧となる状態のことです。
特に高齢者でその割合が増加し、診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上の患者さんの15〜30%が白衣高血圧にあたるとされています。
白衣高血圧は、本来、高血圧未治療の方において使用される言葉で、治療中の方においては「白衣現象」または「白衣効果を伴う高血圧」とされます。ただし、実際には治療中の方にも白衣高血圧の言葉を使う場合が多くあります。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019
Pickering TG, et al. N Engl J Med. 2006; 354: 2368-2374

  • ※1 治療中患者の仮面高血圧は治療中仮面高血圧と記載される。仮面コントロール不良高血圧と記載される場合もある。
  • ※2 治療中の場合は、白衣現象または白衣効果を伴う高血圧と記載される。

持続性高血圧との違い

白衣高血圧は原則として診察室で測る時以外は血圧値が基準値を超えることはありません。
一方で、持続性高血圧は、測定する場所に関係なく基準値を上回る際に分類されます。

白衣高血圧を放っておくのがよくない理由

白衣高血圧は、診察時のみ一時的に血圧が上がる状態であり「ちょっと緊張しただけ」と楽観的に考えられがちです。
しかし、血圧が上がることのない患者さんに比べると、中長期的に脳心血管病のリスクが高いため、注意が必要です。

岩手県で行われている大迫 (おおはさま)研究では、はじめの調査で白衣高血圧だった人は、将来的に持続性高血圧に移行するリスクが正常血圧の人に比べて1.8倍高かったことが報告されています。
出典:Ugajin T et al. White-coat hypertension as a risk factor for the development of home hypertension: the Ohasama study. Arch Intern Med. 2005, 165, 1541

また、イタリアでの研究において、1400人の高血圧患者のうち白衣高血圧と診断された225人のうち、42 .6%が10年後に持続性高血圧に移行したことが報告されています。
出典:Mancia G, et al. Long-term risk of sustained hypertension in white-coat or masked hypertension. Hypertension 2009, 54, 226

このように、さまざまな研究において、白衣高血圧は持続性高血圧に移行する可能性が高いことが報告されています。

生活習慣を見直して高血圧への移行を予防しよう

白衣高血圧は、将来的に持続性高血圧に移行する可能性が高く、注意深い経過観察が必要とされています。
定期的に医療機関を受診し、医師のアドバイスを受けるようにしましょう。医療機関では、薬による治療だけではなく、生活習慣の改善についても相談することが可能です。

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