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高血圧のときに気をつけたい塩分
塩分と血圧の関係について解説

高血圧の治療の基本は、生活習慣の改善です。
特に食習慣については「塩分の摂り過ぎに注意する」とよく耳にします。そもそも、なぜ高血圧の予防、治療において塩分の摂りすぎに気をつけるべきなのでしょうか?
この記事では、塩分摂取で血圧が上昇する仕組みをわかりやすく解説。さらに、適切な塩分の摂取量の目安や、高血圧を予防、治療する際に気をつけたい食事まで具体的にご紹介します。

目次
この記事の監修医師
八田内科医院 院長、京都府立医科大学臨床教授、日本高血圧学会学術評議員
八田 告 先生

塩分とは?

塩分とは、いわゆる食塩(塩化ナトリウム)のことです。ナトリウムはミネラルの一種で、細胞の外の体液との浸透圧を調節して、細胞外液量を保つ役割を担っています。
私たちは、毎日の食べものや飲みものから塩分を摂取しています。
料理のおいしさを引き立てるために、塩分はさまざまな食品に含まれています。私たちは毎日の食事の中で無意識に塩分を摂取していますが、意識をしないと過剰摂取になりがちなので注意してみましょう。

塩分が血圧を上げる仕組み

摂取された塩分(ナトリウム)はどのように血圧を上昇させるのでしょうか。体液量調節、腎機能、2つの観点から見ていきましょう。

塩分が血圧を上げる理由1
血液量増加による血管への圧力上昇
体内には塩分と水分のバランス(浸透圧)を一定に保つ働きがあるので、塩分を過剰に摂取すると体液の濃度が濃くなるので、体液量を増やして薄めて調整しようとします。そのため血液量が増えることによって血圧を上昇させると考えられています。 また、ナトリウム自体が交感神経を刺激することで血管収縮を起こし、血圧が上昇しやすくなる作用もあります。

出典:​​塩分の過剰摂取と高血圧の関係 下澤 達雄, 穆 勝宇, 藤田 敏郎 2012 年 50 巻 4 号 p. 250-254

塩分が血圧を上げる理由2
腎臓への負担増による機能低下
健康な状態では、ナトリウムなどの物質は腎臓の糸球体(細かい血管の集まり)で濾過や再吸収され不要な分は排出されます。長期に渡り塩分過多の状態が続くと腎臓の細かい血管は過剰濾過が続き、動脈硬化がすすみ、腎臓の濾過する機能が低下していきます。
腎臓の機能低下によって塩分や水分の排出が上手くいかなくなり、血液量が増えていくため、ますます血圧が上がるという悪循環に陥るのです。

1日の適切な塩分の摂取量について

厚生労働省によると、健康的な日本人の成人が当面の間目標とすべき「食塩摂取量」は、男性が1日あたり7.5g未満、女性が1日あたり6.5g未満です。
しかし、厚生労働省の調査では、男女どちらも目標摂取量より2〜3g程度上回って摂取しているとされています。食塩摂取量2gとは、濃い口しょうゆで換算すると小さじ2杯強くらいの量です。
さらに、高血圧患者に推奨される食塩摂取量は、1日あたり6.0g以下です。日常的に減塩を意識しないと目標摂取量は達成できないことがわかります。
まずは自分が口にしようとしているものにどのくらいの塩分が含まれているか、知ることから始めましょう。

日本人と外国人の塩分摂取量の違いについて

世界基準で見ると食塩摂取量の目標は、実はさらにハードルが高いのです。
WHO(世界保健期機関)によると、成人が1日あたりに摂る食塩量の目標は「5.0g以下」を推奨しています。
世界レベルで比較をすると、コメを主食とする各国は食塩摂取量が多い傾向です。

世界レベルで見る日本人の塩分摂取量
日本人の1日あたりの食塩摂取量は、1950年代は15gを超えていました。さらに、1970年代は14g程度だったので、約40年間で日本人の減塩は進んできたほうだと言えるでしょう。しかし、2021年における日本人の食塩摂取量は1日あたり約10gで、世界レベルで見るとまだ高水準とされています。
たとえば、諸外国の1日あたりの平均食塩摂取量は、アメリカは約9.0g、韓国は約9.9gなどです。

出典:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所:諸外国の栄養素等摂取量の比較

世界レベルで見る高血圧の罹患率とは
人口の増加と高齢化によって、世界の高血圧罹患者は1990年の6億5千万人から2019年には12億8千万人に増えました。

2019年における世界の高血圧罹患者のうち、約5億8千万人は診察を受けておらず「高血圧に気付いていない」との推定もあります。高血圧対策の必要性は世界的に見ても高まっており、その一環として塩分摂取量の改善は世界的な健康課題の一つとなっているのです。

出典:Tu N Nguyen et al. Lancet 398, 10304, 932-933, 2021
Lancet. 2021 Sep 11;398(10304):957-980. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01330-1. Epub 2021 Aug 24.

高血圧のときに気をつけたい食事とは

高血圧には、減塩が基本ですが、食塩以外の調味料(ハーブ類、だし類、酸味類など)をうまく使って、食材のおいしさを引き立てる工夫をするとよいでしょう。 また、カリウムを多く含む野菜や果物類は、塩分の排出を促すのでおすすめです。

高血圧のときの食事のポイント

塩分の摂取量以外にも、高血圧のときに気をつけたい食事のポイントがいくつかあります。
食事量が増えると当然ながら塩分摂取量も増えるので、食事量についても注意が必要です。減塩効果を高めるためにも、以下のような食生活には注意しましょう。
  • 暴飲・暴食をする
  • 酒類・アルコールの過剰摂取
  • 飽和脂肪酸やコレステロールの過剰摂取

高血圧におすすめの食事パターン

1.和食
一汁三菜が基本の伝統的な和食は、低脂質かつ低カロリーで、栄養バランスも整った優秀な食事とされますが塩分量が多くなりやすいので注意も必要です。
たとえば、みそ汁を具だくさんにする、塩鮭は避ける、漬物を減らす、サラダを増やすなど、工夫により塩分調整は可能です。
塩分量を調整した上で、和食は高血圧のときにも有用な食事とされています。
2.DASH食
DASH食とは、Dietary Approaches to Stop Hypertensionの略で、高血圧の予防・改善を目的に1990年にアメリカで提唱された食事方法です。
【DASH食の特徴】
  • ミネラルや食物繊維のほか、血管の強化をするタンパク質を積極的に摂取する
  • 飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量を減らす
DASH食を日本人になじみのある和食に応用したレシピも、最近ではたくさん考案されています。
体から余分な塩分を排出できるDASH食は、高血圧のときに取り入れたいおすすめの食事です。
3.地中海食
地中海食とは、その名の通り地中海沿岸(イタリア、ギリシャ、スペインなど)地域の伝統的な食事を指します。
地中海食は赤身肉の使用が少なく、動物性たんぱく質が少なめです。
一方、新鮮な野菜や果物類を多く使い、ビタミン・ミネラル類が豊富なのが特徴。また、オリーブオイルには抗酸化作用のあるオレイン酸が多く含まれており、総合的に地中海食は高血圧の予防・改善に良いとされています。

高血圧の予防・治療について

高血圧の予防や改善には、食生活の改善は有効な手段です。
しかし、食生活の改善だけではなく、生活習慣全体を整えていきましょう。組み合わせて取り組むことでより効果的であるとされています。

【高血圧を予防・改善する生活習慣】

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塩分を控え、生活習慣の改善を意識しましょう

塩分の摂取量が血圧を左右するため、高血圧のときには食生活の改善は欠かせません。
日本人の塩分摂取量はここ40年で減ってきたとはいえ、世界的に見るとまだまだ高いレベルです。意識をしないと塩分過多になりやすいので、まずは自分が日頃食べているものに、どのくらい塩分が含まれているか知ることから始めて、今回ご紹介したおすすめの食事を取り入れてみてください。
さらに、高血圧の改善には食生活だけでなく、生活習慣全体の改善を並行しておこなうことが大切です。定期的に病院を受診し、医師のアドバイスを受けながら血圧を改善しましょう。

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