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高血圧って遺伝するの?
遺伝と血圧の関係について

日本には約4,300万人の高血圧の方がいるとされ、日本人にとって高血圧は身近な病気です。
高血圧になる原因はさまざまですが、家族に高血圧の人がいて自分も遺伝し発症するのではないかと悩んでいる方も多いようです。この記事では、高血圧が遺伝するのかどうかについて詳しく解説していきます。
最後に高血圧の予防方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次
この記事の監修医師
大阪大学大学院医学系研究科
保健学専攻 総合ヘルスプロモーション科学講座 教授
神出 計 先生

高血圧は遺伝するのか?

高血圧を発症する要因は、血圧が上がりやすい体質である”遺伝的要因”と、生活習慣などが影響する”環境要因”があります。家族に高血圧の人がいる場合、血圧の上がりやすい体質はたしかに遺伝します。
しかし、遺伝に加えて生活習慣の影響で発症する場合も多いと言われています。
高血圧を発症している家族と一緒に暮らしていることで自然と似た生活環境になってしまうため、高血圧を発症するリスクも自然と高まると言われています。

どれくらいの割合で遺伝するのか?

両親ともに高血圧の場合に子どもが高血圧を発症する確率は約50%、両親のどちらかが高血圧の場合は約30%と言われています。
しかし、仮に両親またはどちらかの親が高血圧だったとしても、日頃から血圧が高くならないような生活習慣を意識しているなどの対策をすれば、子どもの高血圧を発症する可能性は低くなるのではないかと考えられています。
つまり、遺伝に関わらず高血圧に気を使った生活習慣が大切です。

出典:平田恭信監修.高血圧 最新治療と食事.高橋書店
出典:猿田享男監修.高血圧をしっかり下げるコツがわかる本.学研パブリッシング

高血圧はいくつかの原因によって分類される

高血圧は原因によって”本態性高血圧”と”二次性高血圧”の2つに分けられます。
では、これらがどういった原因で分類されているのか詳しくみていきましょう。

本態性高血圧について
血圧をあげる原因が明確に特定できないものを本態性高血圧と分類し、遺伝的要因と過剰な塩分摂取、肥満、ストレス、運動不足、野菜・果物不足、喫煙などの環境要因が関与して起こります。高血圧を発症している人の約90%が本態性高血圧と言われています。
二次性高血圧について
血圧をあげる原因となる病気がはっきりとわかっているものを二次性高血圧と分類し、主に腎臓の病気からくる腎性高血圧、ホルモンの異常で起こる内分泌性高血圧が挙げられます。その他に、甘草の成分を含む漢方やステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤などといった血圧を上げるもしくは降圧薬の働きを弱めてしまう薬の服用による薬剤性高血圧も二次性高血圧に含まれます。
高血圧の原因についてもっと詳しく知りたい方はぜひ以下のページも併せてご覧ください。
高血圧の原因について詳しく見る

どのように対策すれば良いか?

遺伝素因を変えることはできません。したがって修正可能な環境因子、つまり生活習慣の修正を行うことが重要です。
たとえ血縁に高血圧の方がおられ、遺伝素因がありそうでも、下記の生活習慣に留意すれば高血圧の発症を予防できたり、高血圧の管理がしやすくなる可能性がありますのでぜひ取り組んでみてください。

塩分を控える
塩分を摂りすぎてしまうと身体は濃度を保とうとし、体内に水分をため込み血液量を増加させます。その結果血圧が上昇してしまうため、塩分量を控えるよう心掛けましょう。
厚生労働省が出している「健康日本21(第二次)」での食塩摂取量の目標値は8g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満とされています。
まずは醤油やソースの量、味噌汁を飲む回数を減らしたり、ラーメンやうどんなどのスープを飲まずに残したりすることで減塩することができます。
野菜や果物を摂る
野菜や果物には、腎臓から塩分や水分を排出するために必要なカリウムが豊富に含まれているため、積極的に摂るように心掛けましょう。
ただし、腎臓病を患っている人はカリウムの量に注意が必要です。また、果物には糖分が多く含まれているので、糖尿病や肥満の人は医師に相談して量を工夫しましょう。
脂っこい食べ物は控えめに
脂質を摂りすぎると脂質異常症を招くきっかけになります。
脂質異常症は動脈硬化を進行させ、高血圧を発症・増悪させるため、脂質の摂りすぎにも注意しましょう。
同じ油でも、青魚に含まれる不飽和脂肪酸は、動脈硬化の予防に効果的とされています。そのため、できるだけ魚を積極的に摂るように心掛けましょう。
お酒の飲み過ぎに注意
お酒は血圧を上げる要因のひとつです。
大量に飲むことは避け、エタノールで20~30mL/日(瓶ビール中瓶1本)、程度にとどめるようにしましょう。女性の場合はその半分程度(10~20mL/日)が適量です。
タバコをやめる
喫煙は動脈硬化を進行させます。
血管だけではなく血液も固まりやすくなり、血栓を作りやすくなってしまいます。高血圧を予防・改善させたい場合は禁煙にチャレンジしてみましょう。
適度な運動を心掛ける
適度な運動は肥満防止だけでなく、血行も良くしてくれます。
ハードな運動でなくても問題ないので、散歩やジョギング、ラジオ体操などの軽い有酸素運動を1日30分以上するのがおすすめです。運動の時間がなかなか取れないときは、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使うなど、日常生活の中で工夫してみましょう。
ストレスを溜めない
ストレスも血圧を上げる要因のひとつです。
ゆっくりお風呂に浸かったり、好きな音楽を聞いたり、身体を動かしたりするなど自分に合ったストレス発散方法を見つけましょう。睡眠時間をしっかりとることもストレスを和らげる方法のひとつです。

まとめ

家族で高血圧の人がいる場合は、遺伝素因も血圧上昇の原因のひとつとなります。
しかし遺伝だけで高血圧になることは決して多くなく、環境因子である生活習慣も影響しています。
家族に高血圧の人がいて、ご自身の血圧も心配な場合には、生活習慣を見直すことから始めてみましょう。

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