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高血圧と動脈硬化の関係について
動脈硬化の仕組みを理解する

血管の弾力性が失われて硬くなってしまった状態が「動脈硬化」です。
高血圧が要因で動脈硬化が起こることで血管に負担がかかり、さまざまな病気を引き起こします。
加齢に伴って起こる動脈硬化は避けられませんが、生活習慣を見直したり、高血圧の治療を行うことで、予防や進行を抑えることが可能です。
本記事では、動脈硬化が起こる原因や関連する病気、動脈硬化の治療法などについて解説します。

目次
この記事の監修医師
国際医療福祉大学大学院医学研究科 循環器内科学・福岡薬学部 教授
岸 拓弥 先生

動脈硬化とは?

動脈硬化とは血管が硬くなり、本来の弾力性が失われた状態になることです。
気付かないうちに血管がもろくなったり、狭くなったりしてしまい、ある日突然大きな病気を引き起こしてしまうことがあります。

動脈硬化はどのようにしておこる?

動脈硬化は加齢や運動不足、喫煙などさまざまな要因が複合的に重なることで進行します。

高血圧の影響
血管は、拡張したり収縮したりしながら血管内を血液がスムーズに流れるよう手助けする働きがあります。
しかし、高血圧により血管に過剰な負荷がかかることで血管の内側にある内皮細胞が傷つき、動脈硬化を進行させます。
そして、その動脈硬化で血流が滞り、血管に負担がかかり血圧が上昇するという悪循環が起こるのです。
悪玉コレステロールの蓄積
高血圧などにより内皮細胞が傷つけられると、破損した部分に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が入り込みます。
そこへ、白血球の一種である血管の掃除役であるマクロファージが悪玉コレステロールを食べにやってきますが、時間の経過とともにマクロファージも死んでしまいます。
この流れが繰り返されるうちにマクロファージの残骸や生き残った悪玉コレステロールが蓄積され、コブのように血管壁で肥大化することで、血管が狭くなったり硬くなったりして動脈硬化が進行するとされています。

なぜ怖いのか?

動脈硬化が恐ろしい病態と言われているのは、痛みや違和感などの自覚症状がないまま進行し、ある日突然心臓や脳の病気を引き起こすからです。
高血圧を放置すると、このようなことが起こりうることから、高血圧症という疾患は「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」などという異名が付けられています。

放っておくことによるリスク
動脈硬化や高血圧は加齢に伴って誰にでも起こりうる現象の一つであるため、医療機関で指摘されてもとくに気にしていないという人も多いかもしれません。
しかし、放っておくとその間に動脈硬化が進行し、命にかかわる重篤な病気を発症するリスクがあることを理解しておく必要があります。
心臓や脳への影響
心臓に血液を供給している冠動脈に動脈硬化が起こると、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が供給されなくなってしまいます。
また、狭くなっている血管に血栓が詰まると、その先の血流は完全に止まってしまい心臓が機能しなくなります。
同じことが脳の血管に起こると、血管が破裂したり、脳の血流が滞ってしまい脳に障害が生じたりします。

動脈硬化で起こる病気

動脈硬化はただ血管が硬くなる、血流が悪くなる、ということではなく、それにより全身のさまざまな病気を引き起こします。
動脈硬化が原因でどのような病気が起こりうるのか、以下の表にまとめました。

生じやすい部位 引き起こされる病気
心臓 狭心症、心筋梗塞、心不全、心肥大、不整脈など
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作など
腎臓 腎硬化症、腎血管性高血圧症など
眼底出血、網膜動脈閉塞症など
大動脈 大動脈瘤、大動脈解離など
末梢動脈 下肢閉塞性動脈硬化症、壊疽など

このように、動脈硬化はさまざまな病気の引き金となります。
中でもとくに大きな問題となるのが心臓と脳で、たった一度血管が詰まったり破裂したりしてしまうと命にかかわる可能性もあります。

動脈硬化に関する治療について

動脈硬化を治療するには、食事療法、運動療法、薬物療法が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきます。

食事療法
動脈硬化の発症、進行を促す悪玉コレステロールを増やす働きがある飽和脂肪酸を多く含むため、卵やバター、生クリーム、脂身の多い肉など動物性脂肪を摂取する際は、過剰にならないよう注意が必要です。また、塩分の摂りすぎは高血圧を、糖質の摂りすぎは糖尿病を招く要因となります。一方、野菜や果物には、血中のコレステロールを下げる作用がある食物繊維や、余分な塩分(ナトリウム)を体外に排出する働きを持つカリウムなどが豊富に含まれています。
控えるものと積極的に摂取するものをしっかりと理解し、バランスのいい食事を心がけることが大切です。
高血圧の食事について詳しく見る
運動療法
散歩やウォーキング、軽めのジョギングなどの有酸素運動は、動脈硬化だけでなく肥満の解消、自律神経の調節などさまざまな場面で有効です。
一駅手前で降りて歩く、なるべく階段を使う、など日常生活の中で長く楽しく続けられるようなちょっとした変化を取り入れることから始めましょう。
徐々に中性脂肪が減少し、善玉コレステロールが増えることで動脈硬化の予防・治療にもつながります。
現在何らかの治療を行っている方、健康に不安がある方は、医師とよく相談したうえで行いましょう。
運動療法について詳しく見る
薬物療法
生活習慣の見直しを行っても改善が見られない場合に薬物治療が行われます。
ただし、投薬が開始されても生活習慣の改善が治療の基本であることは変わらないので、意識し続けましょう。
高血圧の患者さんは糖尿病や脂質異常症など他の生活習慣病も合併している可能性が高いため、血液検査や尿検査でそれらの合併の有無もチェックし、総合的に投薬内容が決定されます。
高血圧の治療について詳しく見る

動脈硬化の予防のためにするべきこと

動脈硬化にならないようにするためには、先にご紹介した食事の見直しや日常的な運動が欠かせません。
普段から野菜や果物中心のメニューを取り入れ、脂質の少ないタンパク質を積極的に摂りましょう。
普段の生活の中で、積極的に運動も取り入れることも大切です。
オフィスワークの方は、両足を揃えて5秒間浮かせるなど、日常生活に運動を取り入れる工夫をしてみましょう。また、アルコールは適量に、できる限り禁煙を心がけて規則正しい生活を送ることが何より大切です。

普段の生活を見直して動脈硬化を予防・改善しましょう

動脈硬化の進行は、心臓や脳などさまざまな病気を引き起こします。
自覚症状がないため気づかれないことも多いですが、静かに確実に身体を蝕んでいく病気です。
まずは普段の生活で改善できる点がないか見直して、できることから始めることが大切です。

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