高血圧について知る
お役立ち情報

高血圧によるリスクを解説!
押さえておくべきポイントとは?

「高血圧によるリスクには具体的にどんなものがあるんだろう?」
高血圧は身体によくないと分かっていても、自覚症状がなかったり、普段の生活に特段の支障がなかったりすると、高血圧のリスクについて今ひとつピンとこない人もいるのではないでしょうか?
結論からいうと、高血圧が持続すると全身の血管が障害され、身体にさまざまな悪影響を及ぼします。そこでこの記事では、高血圧のリスクについて具体的に紹介します。
すでに高血圧の治療を始めている方、まだ高血圧と診断されていない方も、ぜひ参考にしてみてください。

目次
この記事の監修医師
大阪大学大学院医学系研究科
保健学専攻 総合ヘルスプロモーション科学講座 教授
神出 計 先生

高血圧によるリスクとは?

高血圧になると、主に以下のような病気になるリスクが高くなります。

これらの病気は、動脈硬化が原因で起こると言われています。
動脈硬化とは血管壁が硬く厚くなった状態のことで、加齢や高血圧などさまざまな因子が関与して進行していきます。
動脈硬化を呈した血管は内腔が狭いため、血液の流れが悪くなっているのが特徴です。

動脈硬化が起こるしくみ
そもそも血圧とは、心臓から送り出された血液が血管壁を押す力を指します。
元々血管壁はやわらかいのですが、高血圧が長く続けば続くほど強い圧力によって血管壁は傷つき、傷ついた部位の修復を繰り返すことでだんだん肥厚し、硬くなっていくのです。
また、冠動脈や頸動脈など比較的太い血管においては、ドロドロの血液やプラークと呼ばれる悪玉コレステロールが硬くなったものが血管壁に沈着すると、血管の内腔がさらに狭くなったり、ひどい場合は閉塞したりして血液が十分に送り込まれなくなります。
動脈硬化について詳しく見る
高血圧によるリスクが生じる理由
身体の細胞が活動するためには、血液に含まれている酸素や栄養が必要です。高血圧の持続で動脈硬化が進行すると、身体の隅々まで血液が行き届かなくなります。
このように高血圧による動脈硬化の進行は、脳や心臓、腎臓の血管だけでなく、すべての血管に起こる可能性があります。

高血圧と関連した脳心血管病のリスク

高血圧による脳心血管病のリスクは、血圧と以下の7要因がいくつあてはまるかによって、低リスク、中等リスク、高リスクの3つに分類されます(表1参照)。高血圧であって複数の要因を有している場合、高リスクと判断されてしまいます。

リスクの発生に影響を及ぼす要因には、以下の7つがあります。

この7要因がどのように血圧上昇と関連して脳心血管病のリスクにつながるのか、詳しく解説していきます。

1.高齢(65歳以上)
加齢に伴って血管壁の弾力性が低下するため、動脈硬化が起こります。動脈硬化により、様々な合併症を引き起こす可能性が増します。
2.男性
男性は、血圧を下げる働きを有するエストロゲン(女性ホルモン)が分泌されにくいため、女性に比べて血圧が早くから血圧が高くなると言われています。
3.喫煙
たばこに含まれるニコチンには血管収縮作用があります。そのため、喫煙中には血圧が上昇する傾向があります。特に紙巻たばこから出る有害物質が動脈硬化を進めることが知られています。このため高血圧になったり、高血圧の血管合併症が進行しやすくなります。
4.脂質異常症
脂質異常症とは、悪玉コレステロールや中性脂肪が血液中に多く存在している状態です。これらが血管壁に蓄積され続けると、動脈硬化が進行します。そうなると血液の流れが悪くなり、高血圧によるリスクが高まる危険性があります。
5.肥満
肥満があると循環血液量の増加が起こり、血圧が上昇します。また肥満は動脈硬化を進めるため、高血圧による脳心血管病が発症しやすくなります。
6.若年(50歳未満)での脳心血管病の家族歴
若齢で脳心血管病を発生した家族がいる方は、同じく、高血圧と関連した病気が発生するリスクが高いと言われています。
そのため、家族歴のない方以上に、高血圧を含めたリスク管理を徹底する必要があります。
7.糖尿病
糖尿病の場合、血液がドロドロになっているため血流が悪くなります。その結果、血管の内腔が狭くなったり、最悪の場合血液の通り道がなくなったりすることも。
細い血管はより閉塞しやすいため、脳や心臓の末端まで血液が送り込まれず脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性が高くなります。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット
出典:高血圧治療ガイドライン2019

上記7要因が高血圧と関連した脳心血管病のリスクに深く関係します。

表1 診察室血圧に基づいた脳心血管病リスク層別化

診察室血圧に基づいた脳心血管病リスク層別化

リスク第一層
予後影響因子がない
高値血圧
130-139/80-89mmHg
低リスク
Ⅰ度高血圧
140-159/90-99mmHg
低リスク
Ⅱ度高血圧
160-179/100-109mmHg
中等リスク
Ⅲ度高血圧
≧180/≧110mmHg
高リスク
リスク第二層
年齢(65歳以上),男性,脂質異常症,喫煙のいずれかがある
高値血圧
130-139/80-89mmHg
中等リスク
Ⅰ度高血圧
140-159/90-99mmHg
中等リスク
Ⅱ度高血圧
160-179/100-109mmHg
高リスク
Ⅲ度高血圧
≧180/≧110mmHg
高リスク
リスク第三層
脳心血管病既往,非弁膜症性心房細動,糖尿病,蛋白尿のあるCKDのいずれか,またはリスク第二層の危険因子が3つ以上ある
高値血圧
130-139/80-89mmHg
高リスク
Ⅰ度高血圧
140-159/90-99mmHg
高リスク
Ⅱ度高血圧
160-179/100-109mmHg
高リスク
Ⅲ度高血圧
≧180/≧110mmHg
高リスク
リスク層 高値血圧
130-139/80-89mmHg
Ⅰ度高血圧
140-159/90-99mmHg
Ⅱ度高血圧
160-179/100-109mmHg
Ⅲ度高血圧
≧180/≧110mmHg
リスク第一層
予後影響因子がない
低リスク 低リスク 中等リスク 高リスク
リスク第二層
年齢(65歳以上),
男性,脂質異常症,
喫煙のいずれかがある
中等リスク 中等リスク 高リスク 高リスク
リスク第三層
脳心血管病既往,
非弁膜症性心房細動,
糖尿病,
蛋白尿のあるCKDのいずれか,
またはリスク第二層の
危険因子が3つ以上ある
高リスク 高リスク 高リスク 高リスク

高血圧によるリスクを回避するためには

高血圧による脳心血管病発症リスクを回避するためには、高血圧を予防する・改善することが大切です。高血圧を予防する・改善する方法には、以下の2つの方法があります。

すでに高血圧と診断されていて医師から内服の指示が出ている場合は指示に従いましょう。
一方で、血圧の値が正常値や、もしくは気になり始めた方は生活習慣を見直し、修正すること、また医療機関にかかることも検討しましょう。

生活習慣の見直しには、主に以下の方法があります。

高血圧を予防するための方法について、以下の記事に詳しく書かれていますので、ぜひ参考にしてみてください。

高血圧の予防について詳しく見る

出典:高血圧治療ガイドライン2019

まとめ

高血圧によるリスクは脳、心臓、腎臓、血管などにさまざまな疾患を引き起こすことです。他の要因との関連でリスクが高くなることがあるため、年齢や日々の生活習慣など自分に当てはまる要因がないか把握することが大切です。
高血圧によるリスクを予防するためには、生活習慣を見直し、血圧管理に努めましょう。

お役立ち情報一覧

知っておきたい、災害時の血圧管理 避難生活や防災で気を付けたいポイント

知っておきたい、災害時の血圧管理 避難生活や防災で気を付けたいポイント

災害時には、被災前に良好であった血圧が上昇することが報告されています。それは普段飲んでいる薬が持ち出せなかったなどの薬不足にも起因しますが、それだけでなく、震災後の各種ストレスや環境も大きな要因となり得ることがわかっています。

詳しく見る
高血圧とデジタル医療

高血圧とデジタル医療

「高血圧」と「デジタル」一見関わりがないようで、実は様々な面でこの二つは現在深く結びついています。ここでは、高血圧とデジタル医療について解説していきます。

詳しく見る
高血圧と糖尿病は合併しやすいって本当?高血圧と糖尿病の深い関係性

高血圧と糖尿病は合併しやすいって本当?高血圧と糖尿病の深い関係性

高血圧は日本で患者数が一番多い病気です。また糖尿病も内科で診る病気の中で三番目に多く、年々増え続けています。これらの2つの病気は、肥満、喫煙、運動不足などといった共通の原因によって引き起こされます。

詳しく見る
高血圧の方必見!入浴するときの注意点​ ​​入浴前と風呂上がり時

高血圧の方必見!入浴するときの注意点​ ​​入浴前と風呂上がり時

入浴は体を清潔にするだけではなく、日々の疲れを癒すことで、好きな方も多いかもしれません。しかし、特に寒い冬場の入浴は急激な体温の変化で血圧が大きく上下に変動し、風呂場で失神したり、不整脈や心筋梗塞などを起こしてしまった方をニュースやテレビ番組で耳にした方もいるかもしれません。

詳しく見る
血圧を下げる可能性が報告されている5つの飲み物

血圧を下げる可能性が報告されている5つの飲み物

血圧を下げるには、食生活の改善が大切です。血圧を下げるための食生活の改善というと「減塩」を思い浮かべる方も多いと思いますが、実は毎日飲んでいる飲み物にも気をつける必要があります。

詳しく見る
高血圧とコーヒーの意外な関係 コーヒー飲むと血圧は上がるの?

高血圧とコーヒーの意外な関係 コーヒー飲むと血圧は上がるの?

「コーヒー(珈琲)は血圧を上げる原因」と言われることがあり、コーヒーを飲むことを控えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、コーヒーと血圧の関係について詳しく解説します。​

詳しく見る
高血圧はオンライン診療と相性が良い?

高血圧はオンライン診療と相性が良い?

この記事では、オンライン診療のメリットや気をつけるべき点、一般的な利用の流れ、オンライン診療の費用について解説します。また、高血圧はオンライン診療と相性が良いのか、についても説明していきます。

詳しく見る
高血圧と頭痛は関係あるの?

高血圧と頭痛は関係あるの?

血圧が高い時に、軽い頭痛、頭重感などの症状が見られることがありますが、大部分は自覚症状がないことが多いです。しかし、高血圧に頭痛を伴う場合、重大な病気が合併していることもあり注意が必要です。高血圧と頭痛の関係について詳しくお話しをします。

詳しく見る
高血圧の予防策を徹底解説!

高血圧の予防策を徹底解説!

高血圧の予防策について、どんなことに気をつければ良いのか、今すぐ始められる取り組み方をご紹介します。

詳しく見る
血圧を下げる方法とは?

血圧を下げる方法とは?

高血圧を指摘された場合、血圧を下げるためにどんなことを意識したらいいのでしょうか?血圧を下げるために日々の生活の中で実践できることを解説します。

詳しく見る
新しい高血圧治療「スマート降圧療法」とは?

新しい高血圧治療「スマート降圧療法」とは?

「スマート降圧療法」とは、新しい高血圧治療であり、お医者さんからの指導と、スマートフォンで“生活習慣の改善”に取り組む治療法です。

詳しく見る
高血圧の人の食事で注意すべきことは?

高血圧の人の食事で注意すべきことは?

高血圧の方が毎日の食事で積極的に摂った方が良い食事、減らした方が良い食品などを具体的にご紹介します。

詳しく見る
仮面高血圧とは?

仮面高血圧とは?

仮面高血圧は、診察室で測定した血圧は正常であるにもかかわらず、家庭など診察室の外で測定すると高血圧に該当することが特徴です。仮面高血圧について詳しく解説します。

詳しく見る
白衣高血圧とは?

白衣高血圧とは?

普段の血圧は低いのにもかかわらず、病院の診察室で測ると血圧が上がるという方がいらっしゃいます。白衣高血圧の概要やリスク、対策について詳しく解説します。

詳しく見る
高血圧における運動療法の効果とは?

高血圧における運動療法の効果とは?

高血圧の治療の基本は生活習慣の改善です。その一環として「運動療法」があります。高血圧における運動効果と運動のポイント、高血圧におすすめの運動の種類まで解説します。

詳しく見る
高血圧と動脈硬化の関係について

高血圧と動脈硬化の関係について

高血圧が要因で動脈硬化が起こることで血管に負担がかかり、さまざまな病気を引き起こします。生活習慣を見直したり、高血圧の治療を行うことで、予防や進行を抑えることが可能です。

詳しく見る
高血圧と診断された場合に控えた方が良い食べ物とは

高血圧と診断された場合に控えた方が良い食べ物とは

血圧が高いと食生活でも注意が必要になります。塩分が高いものなど、血圧が高い場合に摂取を控えるべき食べ物についてご紹介します。

詳しく見る
高血圧によるリスクを解説!

高血圧によるリスクを解説!

自覚症状がなかったり普段の生活に特段の支障がなかったりすると、高血圧のリスクについてピンとこない人もいるのではないでしょうか?高血圧のリスクについて具体的に紹介します。

詳しく見る
高血圧って遺伝するの?

高血圧って遺伝するの?

高血圧になる原因はさまざまですが、家族に高血圧の人がいて自分も遺伝し発症するのではないかと悩んでいる方も多いようです。高血圧が遺伝するのかどうかについて詳しく解説していきます。

詳しく見る
高血圧とストレスって関係あるの?

高血圧とストレスって関係あるの?

ストレスを感じ自律神経が乱れると、心や身体に不調をきたします。実はそれが、血圧の上昇に深く関係しています。ストレスによって血圧が上昇する理由、対策法などについて解説します。

詳しく見る
高血圧と脳梗塞の関係について

高血圧と脳梗塞の関係について

脳梗塞の原因としてよく高血圧があげられます。本記事では、高血圧と脳梗塞の関係や合併症、予防策などについて詳しく解説します。

詳しく見る
高血圧と心不全は関係あるの?

高血圧と心不全は関係あるの?

心不全はさまざまな病気が原因で引き起こされますが、日常的に血管に大きな負担をかける高血圧が最も重要な原因です。心不全の原因や高血圧との関係、心不全の予防策などについて解説します。

詳しく見る
高血圧のときに気をつけたい塩分

高血圧のときに気をつけたい塩分

なぜ高血圧の予防、治療において塩分の摂りすぎに気をつけるべきなのでしょうか?塩分摂取で血圧が上昇する仕組みや適切な摂取量の目安、気をつけたい食事まで具体的にご紹介します。

詳しく見る
服薬をやめることはできるの?

服薬をやめることはできるの?

「高血圧の薬は降圧できたらやめられるの?」このページでは高血圧と診断された方、すでに高血圧の薬を服薬されている方向けに、薬との付き合い方についてまとめています。

詳しく見る
あなたの測り方は大丈夫?

あなたの測り方は大丈夫?

血圧は、たえず変動をしています。この記事では、家庭血圧の正しい測り方や、測定時の注意点などを具体的にご紹介します。

詳しく見る
拡張期血圧とは?

拡張期血圧とは?

血圧を測定した際、ほとんどの人がその数値を「上の血圧」「下の血圧」と表現していると思います。今回は「下の血圧」(拡張期血圧・最低血圧)に注目して概要や基準などについて解説します。

詳しく見る
収縮期血圧とは?

収縮期血圧とは?

血圧を測定した際、ほとんどの人がその数値を「上の血圧」「下の血圧」と表現していると思います。今回は「上の血圧」(収縮期血圧・最高血圧)に注目して概要や基準などについて解説します。

詳しく見る
高血圧と低血圧

高血圧と低血圧

自分の血圧が高いのか低いのかよくわからない。という方も多いようです。血圧の仕組みや、高血圧や低血圧の定義、基準、原因などについて詳しく解説します。

詳しく見る
下の血圧が高い状態とは?

下の血圧が高い状態とは?

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す圧力のことです。本記事では、下の血圧が上がる原因やその影響について解説します。

詳しく見る
高血圧、病院を受診するときはどうすればよい?

高血圧、病院を受診するときはどうすればよい?

健康診断等で「血圧が高い」と言われたけど病院を受診すべきか悩んでいませんか?本記事では、健康診断等で高血圧を指摘されたり、血圧が高いと言われた時にどこの病院を受診するべきか、また何科に受診したら良いかについて解説します。

詳しく見る