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仮面高血圧とは?
「隠れ高血圧」について解説

高血圧の中に、発見されにくい「仮面高血圧」があります。
仮面高血圧は、診察室で測定した血圧は正常であるにもかかわらず、家庭など診察室の外で測定すると高血圧に該当することが特徴です。本記事では仮面高血圧について詳しく解説します。

目次
この記事の監修医師
帝京大学医学部 衛生学公衆衛生学講座 教授
浅山 敬 先生

仮面高血圧とは?

仮面高血圧とは、病院の診察室などで医師や看護師が測定する血圧は正常範囲内であるにもかかわらず、家庭などで測定すると血圧が高い状態のことです。
診察室では正常値になるため、高血圧と気付かれないことも少なくありません。本来の血圧の状態が隠されるという意味で仮面 (masked)の言葉が使われるようになりました。「隠れ高血圧」とも呼ばれています。

基準としては、診察室血圧の平均が140/90mmHg未満、かつ診察室外血圧が基準値以上 (家庭血圧の場合は135/85mmHg以上)である場合に仮面高血圧と定義されます。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019

  • ※1 治療中患者の仮面高血圧は治療中仮面高血圧と記載される。仮面コントロール不良高血圧と記載される場合もある。
  • ※2 治療中の場合は、白衣現象または白衣効果を伴う高血圧と記載される。

持続性高血圧との違い

仮面高血圧は、家庭血圧の平均が135/85mmHgを超えるなど診察室外血圧が高いという点では普通の高血圧(持続性高血圧)と同じです。
しかし持続性高血圧は、診察室と診察室外の測定値に大きな差はなく、どちらでも血圧が高値で維持されている状態です。
それに対し、仮面高血圧は診察室での測定値が高血圧域に達していないことが特徴です。

仮面高血圧は、高血圧と診断を受けていない人の10~15%、すでに降圧治療を受けており、管理が良好な140/90mmHg未満の高血圧患者の9~23%にみられるとされていますが、診察室での測定値が低くなるため、気付かれにくい病態です。

仮面高血圧は持続性高血圧とは違いますが、未治療の仮面高血圧の場合は、脳心血管病の(相対)発症リスクは持続性高血圧と同程度であるという報告もあり、同様の注意が必要とされています。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019
出典:Asayama K, et al. Setting thresholds to varying blood pressure monitoring intervals differentially affects risk estimates associated with white-coat and masked hypertension in the population. Hypertension. 2014;64:935-942

仮面高血圧に注意すべき理由

仮面高血圧は、通常の診察のみでは分からず自覚症状もないため気づいていない人も多くいますが、上記で示すように持続性高血圧と同様のリスクがあるため、注意が必要です。

概要

仮面高血圧は、高血圧ではない方や診察時のみ血圧が高くなる「白衣高血圧」に比べると、臓器障害や脳心血管病の発症率が高くなります。
また、血圧以外にも喫煙やアルコールの過剰摂取、糖尿病などがさらにそれらのリスクを高める要因となります。
実際に、世界5地域で行われた家庭血圧に関する疫学研究を統合した報告では、正常血圧と比較して仮面高血圧のリスクが2.29倍になると報告されています。
仮面高血圧は早朝や夜間など特定の時間、もしくは家庭や職場など特定の場所で血圧が高くなるケースが多いため、家庭血圧を測定し、記録することが早期発見のカギとなります。

出典:Asayama K, et al. Risk stratification by self-measured home blood pressure across categories of conventional blood pressure: a participant-level meta-analysis. PLoS Med. 2014, 11, e1001591.
出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019

仮面高血圧の種類

仮面高血圧として看過ごされやすいのは、次のような場合です。それぞれについて、以下にご紹介します。

早朝高血圧
早朝高血圧とは、朝に測定した家庭血圧の平均値が135/85mmHg以上の場合を指します。
早朝高血圧の中には、夜間から早朝にかけて持続的に血圧が高くなる持続型タイプと、早朝になると急に血圧が上昇するモーニングサージタイプの2つがあります。
持続型タイプは糖尿病や腎臓病、睡眠時無呼吸症候群を有している人にみられ、モーニングサージタイプは高齢者やアルコール多飲者に多いと言われています。
早朝高血圧は、脳や心臓をはじめすべての脳心血管病リスクと関連があり、白衣高血圧よりも臓器障害が進行し、将来的には脳卒中や要介護状態になるリスクが高いとされています。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019
出典:「苅尾 七臣 日本内科学会雑誌話題 仮面高血圧―病態と治療―(P.81)」
出典:Kario. K. et al.Hypertens Res. 2006; 29: 581-587
出典:Asayama K. et al. Hypertens. 2006; 48: 737-743
出典:Nishinaga M, et al. Hypertens Res. 2005; 28: 657-663

夜間高血圧
夜間、就寝中に測定した血圧値の平均値が120/70mmHg以上の場合を夜間高血圧といいます。
就寝中に測定された血圧は昼間に比べて変動が少なく、その平均値が高いことは、より脳心血管疾患の発症リスクの増加や認知・身体機能の低下につながるとされています。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019
出典:Asayama K et al. J Hypertens. 2019
出典:Yano Y, et al. Am J Hypertens. 2011; 24: 285-291

※ABPM(24時間自由行動下血圧測定):24時間自由に行動している中での血圧の変動を測定する方法

昼間高血圧
診察室血圧と家庭血圧がともに正常範囲内であっても、職場や家庭などでストレスを感じている昼間の時間帯の血圧値が135/85mmHg以上になる状態が昼間高血圧です。
精神的あるいは肉体的ストレスがかかることで血圧が上昇するため「ストレス下高血圧」とも呼ばれています。
昼間高血圧の代表的なものが「職場高血圧」ですが、仕事中に血圧を測定する人は少なく、気づかないうちに高血圧が進行するケースが少なくありません。
また、職場高血圧は肥満や遺伝的要素が関係しているとされているため、家族に高血圧の人がいる場合は注意が必要です。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019

仮面高血圧で気をつけること

以下に該当する人は、仮面高血圧になりやすい傾向にあると言われています。

出典:日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019

まとめ

仮面高血圧は、診察室血圧が正常であっても、診察室の外で高血圧を示す病気です。
持続性高血圧と同様に注意が必要です。定期的に医療機関を受診し、医師のアドバイスを受けるようにしましょう。医療機関では、薬による治療だけではなく、生活習慣の改善についても相談することが可能です。

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