高血圧について知る
お役立ち情報

高血圧と低血圧
知っておくべき基礎知識

みなさんは健康診断や家庭で一度は血圧を測定したことがあるのではないでしょうか。
しかし、表示される数値をみても自分の血圧が高いのか低いのかよくわからない。という方も多いようです。
この記事では、血圧の仕組みや、高血圧や低血圧の定義、基準、原因などについて詳しく解説します。

目次
この記事の監修医師
横浜市立大学附属市民総合医療センター
腎臓・高血圧内科
平和 伸仁 先生

血圧とは

私たちの身体は、血管を流れる血液から細胞などの組織が酸素や栄養をもらって正常に動いています。
全身を流れる血液は、心臓がポンプの役割を果たし全身に送り出されますが、血管はその血液量に合わせ適切な圧力で受け止めています。
このように、血圧とは心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す力(圧力)のことをいい、流れる血液量や粘度、血管の弾力性や抵抗などで決まります。

血圧の仕組み

血圧には収縮期血圧と拡張期血圧があります。

収縮期血圧
収縮期血圧は心臓が収縮し、血液が一気に押し出されるとき、血管にかかる最も大きな圧力の値を示しています。
収縮期血圧について詳しく見る
拡張期血圧
拡張期血圧は次に送り出す血液をため込むために心臓が拡張し、動脈の弾力のみで維持される圧力の値を示しています。
拡張期血圧について詳しく見る

血液を強く送り出す収縮期血圧は血圧が高くなるため「最高血圧」や「上の血圧」と呼ばれており、反対に拡張期血圧は血圧が低くなるため「最低血圧」や「下の血圧」と呼ばれています。

高血圧について

日本人の3人に1人は高血圧と推定されていますが、実際に高血圧だと何が起こるのでしょうか。
高血圧と診断される基準値や原因、治療、対策について詳しく解説します。

定義

高血圧とは、安静状態で正常値よりも血圧が慢性的に高い状態をいいます。
高血圧は自覚症状があまりなく、血圧が非常に高い場合には頭痛やめまい、肩こりなどが症状として現れることがあります。

分類と基準

成人における血圧値の分類・基準は以下の通りです。

成人における高血圧の分類:
診察室血圧(mmHg)

収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
Ⅰ度高血圧 140-159 かつ/
または
90-99
Ⅱ度高血圧 160-179 かつ/
または
100-109
Ⅲ度高血圧 ≧ 180 かつ/
または
≧ 110
(孤立性)
収縮期高血圧
≧ 140 かつ < 90

出典:日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019

成人における高血圧の分類:
家庭血圧(mmHg)

収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
Ⅰ度高血圧 135-144 かつ/
または
85-89
Ⅱ度高血圧 145-159 かつ/
または
90-99
Ⅲ度高血圧 ≧ 160 かつ/
または
≧ 100
(孤立性)
収縮期高血圧
≧ 135 かつ < 85

出典:日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019

原因

生活習慣などが原因とされている本態性高血圧と、甲状腺や副腎などの病気が原因で起こる二次性高血圧があります。
高血圧を発症している日本人の多くは本態性高血圧とされています。
本態性高血圧の場合、食塩の過剰摂取や肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどの生活習慣に加えて、遺伝的体質などが組み合わさって引き起こされると考えられています。とくに日本人の場合、食塩の過剰摂取の改善が重要視されています。
出典:日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019

リスク
高血圧は血管に大きな負担がかかり、その負担が続くことで”動脈硬化”のリスクが高まります。
それだけではなく、次第に脳心血管病や慢性腎臓病などといった命にかかわる病気の発症リスクが高まることもわかっています。
治療・対策
治療には生活習慣の修正と降圧薬による治療があります。生活習慣の修正については医療機関で指導を受けることもできます。血圧が高い場合は医療機関を受診して適切な治療を受ける必要があります。

低血圧について

低血圧という言葉をよく聞きますが、一体どのくらいの数値が低血圧と呼ばれるのでしょうか。
低血圧の定義や具体的な基準、原因について詳しくみていきましょう。

定義
正常血圧よりも低いことが必ずしも低血圧とは限らず、日本では低血圧の明確な診断基準がありません。
低血圧は、本態性低血圧や起立性低血圧、二次性低血圧などがあり、全身に十分な酸素や栄養が供給されなくなります。
その結果、立ちくらみや全身の倦怠感、めまい、頭痛、吐き気、動悸、不整脈、食欲不振などといったさまざまな症状が現れます。
基準
現在、世界保健機関(WHO)が世界共通の基準を提示しています。
WHOの低血圧の基準は、収縮期血圧(最高血圧)が100mmHg以下、拡張期血圧(最低血圧)が60mmHg以下を低血圧としています。
起立性低血圧は、寝ている、または座っている姿勢から立ち上がった時に過度に血圧が下がることを指します。
3分以内に20mmHg以上の収縮期血圧の低下、10mmHg以上の拡張期血圧の低下、または収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下した場合に起立性低血圧と診断されます。立位時にめまいやふらつきを感じたり、気を失うこともあります。
出典:World Health Organization Hypertension
原因
低血圧が起こる原因はさまざまで、脳の血液量の減少や自律神経の乱れ、糖尿病やパーキンソン病、甲状腺異常などの疾患や薬が原因になることもあります。
リスク
血圧が低下することで、各臓器に十分な酸素や栄養が行き渡らず障害がおこる可能性があります。少しでも気になる方は医師に相談しましょう。
治療・対策
低血圧の治療・対策は、しっかりと睡眠をとり、規則正しい生活を心掛けることです。
食欲不振などの症状が出ると、栄養バランスが偏ってしまいがちになります。そのため、からだの組織を作るたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品など)をしっかり摂取するよう意識しましょう。
運動をして筋肉を鍛えることも対策のひとつです。無理のないよう自分に合った強度とペースで運動をしてみましょう。
ただし、起立性低血圧の疑いがある方は、医師に相談した上で急な動作を避け、ゆっくりとからだを動かすように注意しましょう。

血圧の数値が気になったら医療機関へ

血圧の値が気になる人は、医療機関を受診し、検査や治療を受けるようにしましょう。

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