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座談会「治療補助アプリが切り開く降圧治療(前編)」 座談会「治療補助アプリが切り開く降圧治療(前編)」
司会
大西内科ハートクリニック院長 大西勝也

大西 勝也

大西内科ハートクリニック院長

参加者(五十音順)
勝谷医院院長 勝谷友宏

勝谷 友宏

勝谷医院院長

自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授 苅尾七臣

苅尾 七臣

自治医科大学内科学講座
循環器内科学部門教授

医療法人社団野村医院理事長たかの内科クリニック院長 野村和至

野村 和至

医療法人社団野村医院理事長
たかの内科クリニック院長

医療法人社団ゆみの理事長 弓野大

弓野 大

医療法人社団ゆみの理事長

生活習慣の修正は高血圧治療の基本だが、患者に行動変容を促すことは時に難しく、期待した効果が得られないこともある。また、個々に異なる生活習慣に合わせた指導も容易ではない。そのような中、今年(2022年)4月に世界初の高血圧治療補助アプリが製造販売承認を取得し、臨床への登場が待たれていた。同アプリの臨床試験成績、臨床に与える影響、高血圧治療における位置付けなどについて専門家の方々に議論していただいた。
生活習慣の修正は時に難しく臨床におけるジレンマである
大西 日本の20歳以上における収縮期血圧(SBP)140mmHg以上の割合は男性で29.9%、女性で24.9%と報告されるなど1)、日本では成人の約3割が高血圧と考えられていますが、その管理は必ずしも適切に行われていません。降圧目標値を達成している患者さんは27%と報告されていますが2)、そこにはさまざまな問題点が認められています。そこで今日は生活習慣病の専門家の先生方と、高血圧治療の課題について討議していきたいと思います。まず、高血圧治療としての生活習慣の修正における現状と課題、工夫している点について伺います。勝谷先生、いかがでしょうか。
勝谷 高血圧治療の基本は生活習慣の修正と降圧薬の併用ですが、日常臨床では降圧薬のみに頼りきりで、生活習慣は通り一遍の指導で終わってしまいがちです。私も理事を務めている日本高血圧学会の「減塩・栄養委員会」でも生活習慣の修正の重要性を啓発していますが、日本人の平均摂取塩分量は1日当たり10.1g(目標は6g)1)と、減塩はまだ一般の方に浸透していないようです。臨床では、高血圧手帳を使用して患者さんの普段の生活習慣を「見える化」していますが、定量的評価や細かい個別指導ができていないというジレンマに悩まされています。
大西 毎月の診察で生活習慣の修正について話しても、同じ話の繰り返しでは聞く方も話す方も躊躇してしまう悪循環に陥ってしまいますね。弓野先生はいかがでしょうか。
弓野 どのように患者さんの行動変容を図るかという点は苦労しています。ゆみのハートクリニックでは、看護師、臨床検査技師、時には受付スタッフなど、多職種でのアプローチを試みています。ただし、実際は降圧、血糖値、脂質の目標達成は難しく、例えば日本では降圧薬服用者で血圧が140/90mmHg未満の割合は男性で約40%、女性で約45%です2)。こうした背景から、私は高血圧治療においては新たなアイテムが必要であると感じています。
大西 メディカルスタッフとの連携は重要ですが、クリニックではスタッフの人数が必ずしも十分ではないのが現状ですね。野村先生はいかがでしょうか。
野村 私は、最初に減塩とDASH食を指導し、次には有酸素運動を勧めますが、患者データを確認しフィードバックすることがなかなかできていません。また苅尾先生らのご研究で床近傍室温が家庭血圧に影響を及ぼすことが示されましたが3)、高血圧治療では生活習慣に加え、住環境にも配慮する必要があります。さらに、漢方治療を始めれば偽性低アルドステロン症に注意するなど、処方薬も細かく確認する必要があります。これらを全て見ていくのは難しいので、当院では近年普及してきているPersonal Health Record(PHR)を用いて治療意欲を高めてもらう工夫をしています。
大西 患者さんに生活習慣のデータをいかにフィードバックできるか、あるいは指導した結果がどのようにわれわれにフィードバックされるかという点はとても大切ですね。
積極的な栄養指導で血圧が有意に低下
大西 先生方のお話から、生活習慣の修正の難しさがよく分かりました。その解決策として新しいアイテムの登場が期待されており、今年4月に承認され9月にサービスの提供を開始したCureApp HT 高血圧治療補助アプリ(以下、CureAppHT)にも注目が集まっています。苅尾先生、CureApp HTの国内第Ⅲ相臨床試験HERB-DH1の概要をご説明ください。
苅尾 まず、HERB-DH1の前に、私が、生活習慣の積極的な修正により血圧の改善が期待できると確信を持った研究を先にご紹介します。薬物療法を施行中の高血圧の患者さん101例を、通常指導を行う対照群と栄養士が減塩を中心とした積極的栄養指導を行う群にランダムに割り付け、12週時の血圧を比較する非盲検ランダム化比較試験を行いました4)。両群でベースライン時と12週時の24時間尿中ナトリウム排泄量、診察室血圧、家庭血圧、自由行動下血圧を比べました。治療を完遂したのは対照群で44例、積極的栄養指導群で51例でした。検討の結果、12週時の24時間尿中ナトリウム排泄量は、対照群で有意な変化が認められなかった一方、積極的栄養指導群では8.6±3.2g(平均値±標準誤差)から6.8±2.9gへと有意に低下していました(順にP=0.34、P=0.002、paired t-test)。また自由行動下SBPについては、24時間血圧、昼間血圧、早朝血圧のいずれも対照群で上昇したのに対して、積極的栄養指導群では全て有意に低下しました(順にP=0.001、P=0.01、P=0.002、paired t-test)。これらの結果から、積極的な栄養指導を行えば血圧の低下が期待できると考えられました。
アプリ使用で12週後の24時間SBPが4.9mmHg低下
苅尾 CureApp HTは、降圧を目的に、高血圧の患者さんにおける生活習慣の修正を支援するアプリです。日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2019』に明記されている減塩、減量、運動など6つの生活習慣の修正5)を患者さんが自主的に実践できるようになるまで支援します(図1)。患者さんがアプリに入力した血圧などの情報に基づき、アプリ内のキャラクターから生活習慣の修正の方法を学べる仕組みになっており、主治医による定期的な診察に加え、診察の「空白期間」をアプリが継続的に支援します。医師側でも「空白期間」の情報が把握でき、診察では適切な指導が可能になります。理解してはいるものの実行が難しい生活習慣の修正を個人レベルで浸透させ、行動変容に結びつけるという効果が期待されます。

 CureApp HTの有効性および安全性を検討するため、国内第Ⅲ相非盲検ランダム化比較試験HERB-DH1を行いました(図26)。対象は、20歳以上65歳未満の非重症、降圧薬未使用の本態性高血圧症患者さんです。『高血圧治療ガイドライン2019』に基づく生活習慣の修正指導に加えCureApp HTを用いた管理も行うアプリ介入群(199例)と、指導のみを行う対照群(191例)に分け、主要評価項目とした登録後12週時における自由行動下血圧測定(ABPM)による24時間SBPのベースラインからの変化量を検討しました。脱落は比較的少なく、アプリ介入群192例、対照群180例で12週のフォローアップが完了しました。

 両群の患者背景は、年齢(平均値)が対照群52.0歳、アプリ介入群52.4歳、BMI(中央値)が両群とも25.2、喫煙率がそれぞれ15%、17%、降圧薬の服用歴の割合が14%、16%、脂質代謝異常の割合が48%、52%、糖尿病の割合が7%、6%でした。24時間SBP(平均値)は144.9mmHg、144.3mmHg、早朝家庭SBPは149.3mmHg、 147.0mmHg、診察室SBPは154.1 mmHg、153.2mmHgでした。

 12週時における血圧のベースラインからの変化量を見ると、主要評価項目の 24時 間SBPは対照群で- 2.5mmHg(95% CI - 5.1~0.1mmHg)だった一方、アプリ介入群では-4.9mmHg(同-7.3~-2.5mmHg)と、有意差が認められました〔群間差-2.4mmHg、95%CI -4.5~-0.3mmHg、P=0.024、ベースライン時の血圧値を共変量としたANCOVA(統 計 解 析 手 法は以 下同)、図3〕。 早 朝家庭SBPで、それぞれ-6.2mmHg(95%CI -9.1~-3.3mmHg)、-10.6mmHg(同-13.3~7.9mmHg)と群間差が-4.3mmHgでした(95%CI -6.7~-1.9mmHg、P<0.001)。診察室SBPでも有意差が認められました(P=0.006)。

 早朝家庭SBPについて見ると、アプリ介入群では4、8、12週時において、対照群との差を同等に維持しながら有意に低下し続けました(いずれもP<0.001)。

 体重についても、12週時に対照群と比べアプリ介入群で有意な低下が認められました(P=0.003、対応のないt検定)。また、塩分チェック問診票スコアは12週時に対照群と比べアプリ介入群で2.7ポイント有意に低下しました(P<0.001、対応のないt検定)。なお、アプリ利用率、家庭血圧測定率は12、24週時ともにいずれも95%を超えました。

 アプリによる生活習慣修正プログラムでは、まずstep 1でアプリのキャラクターと対話的にコミュニケーションを取りながら、14チャプターの教育を受け、正しい知識を学習してもらいます。4週時で約3分の2の患者さんがstep 1のコンテンツを完了していました。続くstep 2は、個人の優先度に従い、減塩、減量、運動、睡眠改善、ストレス管理および節酒という6つの生活習慣修正カテゴリごとに1~6つの行動目標に取り組みます。このstep2は、12週時で少なくとも3分の2の患者さんがコンテンツを完了していました。

 全ての有害事象について本アプリとの因果関係は否定されています。有害事象の発現率は、アプリ介入群が45.5%、対照群が27.8%でした。感染症および寄生虫症がそれぞれ16.5%、7.7%、筋骨格系および結合組織障害が14.0%、4.1%、胃腸系障害が10.5%、4.6%などでした。

 こうしてHERB-DH1は、CureAppHTによる高血圧におけるデジタル治療の世界初のエビデンスとなりました。
図1
CureApp HT 高血圧治療補助アプリを用いたデジタル治療の概念

※画像はイメージです。

(株式会社CureApp提供)

デジタル治療は高血圧治療の有望な選択肢の1つ
苅尾 高血圧治療においては今後、薬物療法、CureApp HTを含めた非薬物療法、あるいは腎デナベーションを用いてどのように降圧させるかが課題です。生活習慣の修正は早期からの開始が重要であり、患者さんの嗜好や特性に合わせて医師が提供したストラテジーの下、shared decisionmakingを行いながら心血管イベントの抑制につながる治療を行うことが大切です。その中で、デジタル治療は高血圧治療における有望な選択肢の1つであると考えられます。

 一方、デジタル治療の課題としては ①薬物療法との併用 ②他のリスク因子への効果 ③レスポンダーの同定 ④長期の効果と安全性 ⑤予後の改善効果-が挙げられます。
大西 ありがとうございました。CureApp HTの併用で血圧が下がり、それが維持できたこと、さらにCureAppHTの継続率も高かったことなど、大きなインパクトがある結果でした。
図2
国内第III相非盲検ランダム化比較試験 HERB-DH1 の試験概要および安全性
目的:
薬物治療を受けていない本態性高血圧患者に対する CureApp HT 高血圧治療補助アプリの有効性と安全性の検討
対象:
本態性高血圧患者のうち、食事・運動療法などの生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると医師が判断した者
主要な選択基準は、
①降圧薬による内服治療を受けていない高血圧患者(Ⅰ度またはⅡ度高血圧)
②20歳以上65歳未満
③スマートフォン(iOSまたはAndroid搭載)を日常的に携帯している
④スクリーニング期自由行動下血圧測定(ABPM)による血圧の平均値が収縮期130mmHg以上-など主要な除外基準は、二次性高血圧症又はその既往など
主要評価項目:
治験登録後12週時におけるABPMによる24時間の収縮期血圧のベースラインからの変化量
副次評価項目:
治験登録後12週時および24週時における次の項目①早朝家庭血圧(収縮期血圧)のベースラインからの変化量②体重およびBMIのベースラインからの変化量③塩分チェック問診票によるスコアのベースラインからの変化量④アプリ介入群のアプリ使用状況-など
安全性評価項目:
有害事象および本アプリの不具合
解析計画:
第一種の過誤(α=0.05)、検出力90%を考慮した上で、本試験における例数を設定した。血圧値(ABPMおよび家庭血圧)は、FAS(FullAnalysisSet)を対象としてアプリ介入群/対照群別、施設、薬物治療歴の有無を因子とし、ベースライン時点の血圧値を共変量とした共分散分析(ANCOVA)を用いて解析した。その他の評価項目(体重、BMIおよび塩分チェック問診票によるスコアのベースラインからの変化量)は対応のないt検定を用いて解析した。
有害事象:
全ての有害事象について、本アプリとの因果関係は否定されました。重篤な有害事象として、肺塞栓症がアプリ介入群で1例、リンパ腫加療のための治験中止申し出が対照群で1例発現しました。また、治験中止に至った有害事象として、狭心症がアプリ介入群で1例、対照群において、高度の視力障害、頭蓋内動脈瘤、喘息がそれぞれ1例ずつ発現しました。死亡例は認められませんでした。
本アプリの不具合:
登録後12週までに21.0%(42/200例、47件)、24週までに24.0%(48/200例、57件)で不具合が認められました。重篤な有害事象を引き起こすおそれがあると認められる不具合報告はなく、スマートフォンと家庭血圧計とのペアリング関連の不具合が36件/57件と最も多くみられました。
図3
12週後における収縮期血圧のベースラインからの変化

(図2、3とも承認時評価資料:本結果はKario K, et al. Euro Heart J 2021; 42: 4111-4122. にも掲載)

■文献

  1. 厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査.
  2. 三浦克之. 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業「新旧(1980-2020年)のライフスタイルからみた国民代表集団大規模コホート研究」平成30年度総括・分担研究報告書, 2019.
  3. 中島雄介. 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集(2015. 9. 16~18).
  4. Nakano M, et al. J Clin Hypertens 2016;18: 385-392.
  5. 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版, 2019.
  6. Kario K, et al. Euro Heart J 2021; 42:4111-4122.
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